2011年5月1日日曜日

プレデターと、東京のマンション




 プレデターなる映画を御存知でしょうか。アメリカのカリフォルニア州知事となった、シュワルツネッガーが主演のアクションSF映画の題名です。なにやら宇宙船に乗ってきた異星人が地球で人間狩りをするストリーです。プレデターは大変に醜い顔をしています。皆さんが美味しいと云って食べる北海道の花咲蟹や越前蟹のような顔をしています。


 プレデターのシナリオ製作者は多分、私と同じ経験をしていたんじゃないかなと思っています。私は子供時代に毎日のように、小さな殺し屋になりました。小学校が終わると、ランドセルを家の畳の上に、ほおり投げて、一目散に家の前の階段を駆け下りていきます。赤土の砂利道を、何本か道を横切って歩いて行くのです。道すがら、手には、竹で出来た細いほうどし棒を拾って握ています。道の両側には、魚の加工工場やチャッカ船を作る船大工が船を作っていました。道がちょっと上がり坂になり、すぐに海と空が視界いっぱい入ってきます。そして、私を待っている古い錆びれた築港を目指して砂浜を降りていくのです。築港は、外側の裾が海の波に洗われています。東築港と西築港の間に、船がワイヤーで引き上げられて、休むのです。私の目当ては、東築港です。大きなセメントのブロックを何段にも積み重ねて作られています。砂浜から海に突き出ている長さは150mぐらいはあると記憶しています。雨風や陽に晒され黒く錆びれ、苔むしています。そして、ところどころ崩れています。高さは2階建ての家ぐらいの高さです。ブロックとブロックの隙間に手と足をかけ、よじ登るのです。


 登り終わると、二本の竹の棒を使って、緑の迷彩色の磯蟹を挟んで捕まえます。磯蟹はブロックとブロックの間に挟まれて立っています。小さい磯蟹は5cmぐらいですが、大きな磯蟹になると10cm位の大きさになります。赤い鋏を持っている大きな磯蟹を捕まえる時は、ドキドキして、心を躍らせます。小さくても、はさみを振りかざし、とても勇敢な奴らだからです。それは、若い女性が、赤いルビーや、キラキラ光っている小さなダイヤモンドを手に取るときと同じ気持ちかもしれません。そして、築港の先まで、残らずブロックの隙間にいる磯蟹を捕まえるのです。捕まえて食べるとか、何かするということではなく、とにかく捕まえるのが目的だったのです。築港の先端までいくと、私の狩猟欲と呼ぶのでしょうか、満たされて、後は築港の上で時間を過ごしたり、砂浜に下りて散歩したりと夕方まで遊んでいるのです。大体が暗くなるまで遊んでしまいます。家に帰るとおふくろさんの大きな叱り声が、耳に入ります。


 『いつまで、遊んでんだ。こんな時間まで。早く帰って来い。』


 現在、不景気の最中、驚いたことに、マンションをたくさん建設しています。マンションを見るたび、あの蟹達を思い出すのです。狭いブロックに挟まれている蟹達をです。私自身も9階建ての賃貸マンションの4階に住んでいます。夕方にマンションの部屋に明かりが付いて、住人の家族がテーブルの側で、食事の用意して動き回る姿がみえます。頭と天井の間がほんの少ししかないので、窮屈そうに見えます。何時か、私が蟹を棒ですくいだして捕まえたように、誰か得たいのしれないものがマンションの住人を捕まえてしまうような気がするのです。


 いつだったか、志の大きな人間を作るには高い天井が必要だとの言葉を聞きました。多分、少年よ大志を抱け、と同じ性質のものだと思います。低い天井の下では、空の青さを見て、世界の大きさを感じることや、夜空の星を眺めて、宇宙の神秘に好奇心を持つ事が出来なくなるような気がするのです。人を思いやるには、大きな心が必要ではないでしょうか。人や世界と仲良く暮らすには、懐に深い思いやりが必要ではないでしょうか。


 日本の皆さん、天井の高いマンションや家を建てませんか。

 

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