2012年9月20日木曜日

解決しない拉致問題と、京王線千歳烏山駅付近の踏み切り前で待つ1時間の景色



 『カンカンカンカン・・・・・・カンカン。』



 ここは京王線千歳烏山駅の近くにある小さな踏切です。前には2台の車があり、バックミラーに映る車の列は、目に見える限り続いています。時計を見ると8時30分です。曇り空の9月19日木曜日の朝の通勤時間です。踏み切りの向こう側には、同じくたくさんの車と、青いシャツ、紺色の制服制帽を被った年配の警察官が、うつむきながら赤い信号の点滅器の下で、踏み切りの開くのを待っています。そんな警察官の周りにいた、会社員や高校生達は、次々に踏み切りの前から諦めたように、どこかに立ち去っていきます。私の車の前を、ときおり高校の女学生が白いブラウスと制服のスカートを履いて、自転車に乗り横切っていきます。



 もう、1時間踏み切りの前にいます。そして、クラクションも鳴らす車も無く、静かに全ての車が踏み切りの開くのを待っているのです。そして、さっきまで踏み切りの前にいた自転車に乗った年配の警察官も諦めて、どこかにいってしまいました。




 京王線の踏み切りが開かない事は、もう何年も前から知られている事です。そして、今朝は、うっかりして、その踏み切りの前に並んでしまったのです。うかつでした。そして、日本人の限界を知らない忍耐力に恐れ入っているのです。もう、待つしかないのです。




 しかし、なんだろう。この受け入れる事をしてはいけない事情を、受け入れてしまっている現実は、なんだろう。1時間も踏み切りが開かないのだ。それを、今ここに、受け入れている多くの日本人がいる。もちろん、多くの人達が、関係者が、この京王線の踏み切りを問題の無いように、したいと考え、申し入れ、何らかの働きかけをしたのだろう。多分。




 変わらない日本人を見る思いだ。天皇が住む皇居の周りの池の中で丸太のように動かないでいる大きな灰色の魚、鯉を見ているようだ。地震や災害が起こった時だけ、大騒ぎする。そして、しばらくすると忘れてしまうのだ。次の地震や災害がくるまで、そのことを忘れてしまうのだ。今も、原発事故で家を失った人達や、原発のメルトダウンの様子も分からないでいる。そのことも、忘れようとしてしまっている。




 北朝鮮にいる日本人は、忘れないでしょう。日本にいる日本人は忘れていても、日本の事を。拉致家族の人達は、忘れてしまったのです。人間の怒りを表現する方法をです。何故怒りを正直に顔に体に、拳に込めて表現しないのでしょう。疲れてしまったのでしょうか? 日本政府の拉致担当者なる人の顔を見れば、すべてが分かります。拉致家族の人が、まだまだ踏み切りの前で黙って静かに待つように待つだろと・・・・。



 昔、北朝鮮にだ捕された漁船の紅粉船長の家族は、何度も何度も、たくさんの政治家の人に助けて下さいと、懇願したに違いないのです。ことわられ、無視され、知らぬふりをされたのです。それでも、諦めずに懇願したのです。心から、命が続く限り、それをしようとしたのでしょう。そして、そんな人の諦めをしらない行動、それを見過ごしたら、政権与党であった自民党は無くなってしまうと恐れ、自民党の実力者金丸信が北朝鮮に渡って、紅粉船長をかえしてもらったのでしょう。




 拉致問題は拉致された日本人と家族だけでは無く、日本と日本人の姿そのものなのだ。京王線の踏み切りで、踏み切りが開くまで待つ人達なのだ。皇居の池の中で丸太のように肥えた鯉のように、誰かが餌を投げてくれるのを待つのだ。誰かがしてくれるのを・・・・・。



 しかし、何年かしたら、拉致被害者も拉致家族も、この世から死んでいなくなってしまう。そして、日本にいるのは、増税をする財務省と民主党、増税を支払う国民だけになってしまう。何もすることなく、税金を徴収する者と、税金を支払う者だけだ。苦しんで、困っている人を助ける事を忘れて・・・。これって、恐ろしい人殺し犬になってしまうって事だよ。きっと。




 『家族が攫われてしまいました。心が苦しくて痛いと叫んでいます。何とか力を貸して下さい。どうそ、助けて下さい。』

 『税金を払え! ワンワン! ウー! ワンワン!』

 『放射能事故で家を追われてしまいました。どうしたらいいんでしょう。』

 『ウー! ワンワン! 払え、税金を! 代表選挙で忙しい、忙しい! ワン。』







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