2009年5月5日火曜日

怒ってくれる人




 『だから駄目なんだよ!しっかりハンドルを持たなきゃ駄目っていってるだろ!』



 お父さんが怖い顔をして真剣に怒鳴りながら怒っている。



『ええ~ん。』



 小学生2年生ぐらいの女の子が顔をゆがめて泣いている。



 公園で自転車の乗り方をお父さんに教わっているようだ。側を自転車で通り過ぎてやりすごすと、お父さんの怒鳴り声が段々と遠くなる。いるんだねえ~。まだ、こんなお父さんが。昔はみんな、こんな感じのお父さんだった。真剣になるんだよね。いい歳なのに、まわりが見えないんだよね。そういえば、最近は変な人がいなくなった。いかにも、おおらかな人とか、怖い人とかが。多分、いつぞやのNHKの放送内容の通りに日本の教育の一貫で均一人間ばかりになってしまったのでしょう。



 そんなお父さんを見て思い出した。トカラ列島という島々が南のほうにあるらしい。私が若い時に読んだ本に書いてあった。そこに若いヒッピーがきたそうだ。島民と一緒に暮らしをしはじめたそうだ。東京から南の島に流れ着いた若者。何が良いのか悪いのかが分からなくなってしまい、ヒッピー生活をしているような書き出しだった。そして東京に帰った。



 ヒッピー青年の両親が島民に逢いに、東京から来たそうだ。



『ありがとうございます。うちの息子をちゃんとした人にしてくれました。』



 そのような内容の事を島民に言いながら、ヒッピー青年の両親はお礼を言い感謝して帰ったそうだ。本には、そのようにかいてありました。



 人が見ているときと見ていないときの態度が違うのが普通だと思うけど。都会生活をしていると、分からなくなるんだよね。建前ばかりの話しで、どうしても同化していまう部分があるよね。そんな中で生活していると自分が誰だか分からなくなって、何も考えなくなってしまう。本当の事、本音の部分が分からなくなって、だらだらとした人間になってしまいます。



『あのさあ。分からなくなってねえ。会社を休んだり、遅刻してたりしてたんだあ。でも、会社の先輩に怒鳴られてなぐられたんだよ。『そんな事で生きていけるか!』って。君にはそれがないね。』



 同郷の友達が言ってました。真剣に怒ってくれたんだね。彼の寮に、若い頃泊まった事があります。朝、目覚ましの時計がなりました。隣のベッドに寝ていた彼がむくっと起きました。それは、まるでベッドからビリビリと紙を破くように体を起したのを覚えています。睡眠から抜け出す、その力にとても感心しました。