『でも、それは、どう言った事なんでしょう。どう言った社会現象なんですか?』
『やっぱり、不景気なんですね。もう、たくさん潰れましたよ。小さな会社とか、家族でやってる会社とかね。』
昨日、たくさんの会社の経理を任されていると云う女性と話をしました。70歳を過ぎ、それでも、毎日忙しく仕事をしていると云いました。年齢のせいで、週に五日しか働けないとこぼすように云います。しかし、小さい会社が、潰れているので、少し休みが取れるようになったと、笑っていました。今年の五月には、京都に旅行が行けると、嬉しそうに話しました。平成24年3月30日の現在も、不景気が続いているのです。
『小さな会社の経理を見ていると、これで良くやっているわね~、って思うわよ。赤字でね。ある小さな会社で、もう自分達で経理を見るから、教えてくれっていわれたわ。もう、お金を払えないのね~。』
『へえ~。』
彼女は、月や年毎に、期日を決め、たくさんの会社の経理を見ているらしいのです。現在、たくさんの会社の営業成績は良くなく、大変な事になっているようなのです。そんな話を、楽しそうな感じで、私に話します。多分、良き聞き手を得たことで、日頃のストレスを発散しているのだと思います。
そんな彼女と話をしていましたが、春が、近くまで来ているようです。今日は強い風がぴゅーぴゅーと吹いています。春を前にした季節の変わり目を知らせる風のようです。そんな春が近づいている今日この頃、遠い昔の幼い日々の春うららかな日に、ちょっとショキングな光景を見た事があります。その日は、いつものように、天気の良い、のんびりした空気が流れていた田舎の午後の事でした。昔は、犬が鎖に繋がれることなく、飼い主の家の周りに、よく寝そべっていました。家の近所に、小型の毛の長い雑種の犬がいました。おとなしい犬で、吠えたり、近所を歩き回る事を見たことがありません。その犬は小さなコリーの雑種犬です。足が短く、太って白と茶色の毛がふさふさしていました。
『ギャーン。』
その犬が、周りの空気を引き裂くような、大きな悲鳴を一声上げました。見ると、保健所のくすんだ灰色の上下の作業服をきた均整の取れた男の人が犬を、棒の先に付けている吊り輪で犬の首を絞めて連れ去ろうとしていたのです。それに気が付いた飼い主の小太りの奥さんが、白い前掛けをした姿で保健所の人に、話をしています。何とか、犬を放してくれるようにと。保健所の男は、しばらく黙って奥さんの懇願を聞いていました。私の記憶には、犬がどうなったか残っていません。放されたのか、連れ去られたのか。しかし、それは、あっと言う間の出来事でした。家の裏口には、奥さんも犬と、のんびりとした空気と春の暖かい陽だまりの中、そんなに離れることなく、そこに居たのです。静かに目だたない灰色の車が、通り過ぎ、静かに止まりました。その車のドアが開き、黒い長靴を履き、くすんだ灰色の作業服姿の男は音もなく、現れたのです。
経理をしている女性の話から、小さな会社や、家族で会社を経営している人々が、この犬のように思えます。いきなり、棒に吊り輪をつけた男がやってきて、連れ去られてしまう。今の消費税の増税のようです。あっと言う間に、有無を言わさず前原政調会長が一任を取り付けたように見せかけ、不景気で苦しんでいる庶民の姿など、眼中に無いかのように・・・・。
なんとなくわかるような気がします。自民党の議員さんが民主党の今の内閣を、このように言いました。
『貧乏内閣』、と。