2013年3月28日木曜日

 長崎に落とされた原爆の被爆者の1人である年老いて、目も見えなくなり寝たきりになってしまったおかあさんの話を聞いて・・・・



 『娘に話したら、言われたよ。お母さん馬鹿じゃないの? って。それでね。わたしも、娘に言いましたよ。これは魂の問題だぞ。国民の税金で支払われるんだぞ。税金は国民の汗と血だぞ。って。』




 お母さんの目のあるところには何か、何も入っていないようでした。白いマスクを口にしています。太ってはいますが、歩く事も、体を自分で動かす事ができないで、息子に支えられて、椅子に座りました。そして、頭の働きと話す言葉と話し方は、まだまだしっかりとしていました。息子さんは、お母さんの履いている茶色をした厚地のもんぺのようなものの腰の布地を右手に掴んでお母さんを椅子に座らせました。




 『長崎の県庁から書類が届いたんですよ。そして、その書類に記名すれば、生涯年金がもらえるってね。でも、母も、私も、その書類には記名もしなかったし、提出もしなかったんです。戦争を体験して、長崎に落とされた原爆の被爆を、私の母と私はしたんです。』




 何か昔の人の素朴な心にふれたのです。桃色の桜の花が満開の春の中、突然、純真で実に強い心の持ち主に出逢ったようなのです。




 『昔は、向こう三軒両隣って言って、こまったときは助け合ったんですよ。私も、困っている隣の人に親切に手伝いましたよ。でも、今は寝たっきりになっちゃってしまっていますけどね。』



 
 この寝たっきりの体の不自由なお母さんは、実に元気な、はきはきとした話方をします。声も穏やかで大きな声を出します。そして、何か現代人が忘れてしまった、感覚を私に感じさせるのです。それは、そこに、あるいは遠い故郷に、今も変わらずにあるものを忘れて、忙しさにかまけてしまって大切にしなければならないものを、おろそかにしまっているのものを。




 『いくら除染したって、もう住めないよ。福島は。』



 そう、おしゃっていましたね。