2009年11月16日月曜日

世界




 不思議な世界。

 『もう、私の時間は終わりに近づきました。』

 そんなんです。私の人生は、後半になりました。残された時間、生活も、残り少ないのです。私には、どれぐらいの時間があるのかは分かりません。今、私の人生、生活を振り返ると、遠慮していたような気がします。何かに、気を使い過ぎて自分でいられませんでした。それは、他人の目なのか、自分が育った環境からくる良心なのか、何なのかわかりません。後悔しているかって、それもわかりません。

 いつも、私の頭上にある青空が黙って私を見ていたのを、確信しています。私の事を不満げな顔をして見ていたのを、感じています。毎日を、日々を自分に正直に生きていないのを、不機嫌な気持ちで見ていたのを感じています。それでも、青空の中に輝く太陽は、やさしく私の不正直を許してくれていました。どうしたら良かったのでしょう、私は。

 色々な情報、人の話や、両親からの教えや、環境からの教え。そんな考えに動いて、心の中の真実を伝える何者かを、信じる事が出来ませんでした。そんな人が何を信じて、生きていくことが出来るのでしょう。

 人は自分で信じる事が出来るのだと思います。自分で決めて、それに従ってです。それが、悪いことでも、良い事でもです。最初は中々思うように心が動かないでしょう。最初にチャッチボールをし始めた、小さな男の子の体の動きのようにです。しかし、続けることにより上手にチャッチボールが出来るようになります。それが、すべてなのです。

 世界が自分に背を向けても、自分には、それが真実なのです。青空が、太陽が、そう言っている事を知っています。年老いている私には、それが真実だと。

2009年11月5日木曜日

自分の尺度で捕らえようとする人





 「山田さん・・・・、つかぬ事をおたずねするようなんですけど・・・・。みなさん、驚いたよ。って言ってましたけど・・。、事故かなんかに合われたのですか・・・。」



 私は、運転席でハンドルを握っている山田さんに、恐る恐る尋ねました。山田さんは、組合の役員らしく顔が広いらしいのです。たくさんの人に、逢ってちょっと言葉を交わしていたのです。ですが、その人達が山田さんの顔を見て驚いた顔をするのです。それで、何となく気になって、話を切り出したのです。



 「俺、癌なんだよ。薬を飲んでるから、髪の毛が抜けちゃってるんだ。」



 ハンドルを握りながら、山田さんが平然とした感じでいいました。確かに、頭の髪の毛はなく、はげています。多分、自分が癌だったら、どうゆう事になるのか想像は付きませんけど。大変な事には違いないと思います。精神的にも経済的にも、肉体的にも。



「そうそう、以前勤めていた会社でも、癌の若い男の人がいて、頭髪がありませんでした。頭に頭巾のようなバンダナを巻いていました。薬の副作用で、やっぱり髪に毛が抜けちゃっていました。」



 私も、平然と山田さんの癌の告白を受け止めて、答えました。そして、それっきり癌の話題はしませんでした。山田さんは、既に癌と呼ぶ事実を受けとめ、自分の中に受け入れたようでした。



 人生には、たくさんの事実があります。好きとか、嫌いとかのレベルでは計れない絶対的な事実です。拒絶しても、受け入れても存在している事実です。



 そんな山田さんが、私の身辺の事を尋ねます。そして、初対面の私を計りたいらしいのです。どのような人間であるのかをです。山田さんとの会話の中で3回ぐらい、彼は私と呼ぶ人間に結論をだしました。その度に、私がお話をするので山田さんは私を、計りかねているのです。彼が出した、私と呼ぶ人間の結論では、私を定義できないでいるのです。



 確かに、彼は癌です。病院にも行き診断され、薬を飲み頭髪も抜けてスキンヘッドになってしまいました。しかし、自分の生活や人生には、まだ結論を出していないと思うのです。癌と呼ぶ事実には、妥協しても自分の生活や人生には、まだ改善する交渉の余地があります。



 人は生きている限り、自分の生活や人生を実りあるものに出来ると思うのです。誰に言われようが、人は自分の生活や人生、そして自分自身をこうありたいと決め、行動するとが出来ると思います。人がどのような尺度をもって計ろうが。

月島であった御夫婦と、頭を切り替える必要がある日本の人達





 『あのね、この人ね。こう言ったんだよ。』



 なにやら、私の後ろから歩いている年配のご夫婦の奥さんの小さな話し声が、私の耳に入ってきます。どうも、私を笑いものにしたいらしいのです。ひそひそと、話をして私の後から付いてきます。私が都市整備公団の案内の女性に尋ねたことを、変に解釈したらしいのです。私は、そんな彼等と同じ人間を嫌と言うほど知っていますし、逢って来ました。そうなんです。これが、大体の日本人なのです。



 『へえ。そうなんだあ。はははは。わははは。』
 『ほほほほ。』



 私と、都市整備公団の案内の女性は、色々と話をして各階の部屋を見て周りました。そのうちに話は、いつもの事で面白可笑しな内容に展開していきました。東京は江東区にある、もんじゃ焼きで有名な月島の新築賃貸集合住宅の部屋を見に来たのです。大変大きな立派な集合住宅の建物です。エレベータで案内の若いアルバイトの女性に各階に下ろしてもらいました。エレベータの中でも、楽しい雰囲気は変わりません。



 すると、私の陰口を言っていた奥さんの方があわてて、都市整備公団の女性に一言二言言いました。



 そうなんです。あまりにも、暗い事を言っていた自分自身を訂正するために必死なようなのです。それで、なんとかそんな事を言ってしまった自分を救い出そうと躍起なのです。そうなんです。あんまり幸せそうじゃない、背中を丸めた姿勢のご夫婦でも、空気は分かるようなのです。いい空気と悪い空気がです。言っていい事と、悪いことを。



 まだまだ、日本人は救いようがあります。アメリカとの戦争が終わって焼け野原から立ち上がった両親を持つ、私達。まだまだ、先に行けますよ。幸せの方に。


民主党の次にくるもの。考えを作り出せる環境を知っている人達でしょう。





 『ハワユー。』



 小さな子供が、大きな声で言いました。日本人の男の子です。そこは、世田谷区の砧にある運動施設です。体育館、屋内プール、テニスコート、野球場等、たくさんの運動施設がある場所の中です。どうも、外国の方々がたくさんいて、何も考えずに言った様なのです。そうですね。海外の方の、この言葉は耳に残りますね。そんな事で、小学生の男の子は、なんとなく面白おかしく言ったのです。



 違う世界から来た人々の言っている事が分からずに、何となく見たり、耳に入った言葉を聞いていたんだと思います。そして、ハッキリと記憶に残った言葉を子供の素直さで発音したのです。



 民主党が政権を取って、与党になりました。確かに民主党は、国民の生活が第一と、言いました。それは、何を意味しているのでしょう。



 『仕事ないんだもの。ハローワークに行ってもさぁ。ほんとにさぁ。』



 白いタバコの煙を口から出しながら、彼が言いました。大きなタバコの吸殻入れを真ん中にして、大の男が数人で立ち話をしていました。小柄で坊主頭の彼が、私達に言いました。60歳だと、彼は言いました。何の隠し立ても必要もないような素直な男の人です。長い間、営業の仕事をしていたそうです。軽トラックや乗用車で営業周りをしていたそうです。 景気が悪く、長年勤めていた会社に仕事がなくなったようなのです。



 景気が悪化していて、仕事がないのです。世界的に景気悪化なのでしょうけど。そんな彼には、民主党の政策や政治家の方達が、遠い存在です。海外の人達と同じようにしか思えません。小さな男の子のハワユー(国民の生活が第一)としか聞こえないのです。政治が自民党から、民主党に変わっても内容が変わるとは思えないのです。やはり、同じ人種の人達が、政治を行うわけです。政治家と呼ぶ素材自体が変わらなければ、出来上がる政治は、また同じではないでしょうか。真に日本の景気、または日本人の生活を変えるには、生活者レベルの意識を持っている者達が参加しなければ駄目なのでは、ないでしょうか。政治の事務的な考えを持つものではなく、暗闇に明かりを灯せるリーダでなければ。



 秋も深まり、あっと言う間に日が沈んでしまう日々になる季節になりました。