2011年5月3日火曜日

日本男子と、あぶらがに




 『ほら。・・・・足で、ふんずけとけ。』



 兄が、小さな黒いしおり貝に覆われた黒磯の隙間に手を入れて、海水の中から捕まえた、直径18cmぐらいの蟹を、足元に置きました。夏の青い空の下、私は海の上に顔を出している、黒磯の上に立っていました。手で押さえつけましたが、凄い力で、動きを止める事が出来ません。そんな私を見て、足で押さえるように指示したのです。ゴム草履を履いた足で、蟹をふみ体重をかけました。蟹は海水の中に逃れようと、ゴム草履の下でジリジリと動いていました。強い力と、体重を掛けても潰れない、丈夫な甲羅に驚きました。その体は、目にも鮮やかなオレンジ色をしていました。全身に棘のような、でこぼこがあり、なにやら精悍な面構えをしていました。アブラガニの子供です。波が砕け散るような、海水の流れの中にある黒磯を、住処として海藻やアワビ、サザエ等がいる場所に生息していました。



 インターネットに掲載記事内容で、フランス男が、日本の若い男が、考える服装と体型を、不思議がる記述がありました。女性的な体系に見せる服装や、体型にするのが分からない事をです。フランス男は、男らしい体型や、服を好んでいます、と。そんな記事を見て、小学校1~2年生頃、潮が引いた海で兄が捕まえた、あぶらがにを思い出しました。



 子供の頃、強く精悍な大人達を、まわりに見てきたような気がします。海や山でする肉体労働が、男らしい体型と、精悍な顔つきにしていました。静かに作業をする、その姿を見つめてしまうほど、存在感がありました。荒々しい海の中で生きている、力強く、丈夫で逞しい油蟹のようです。



 黒磯の海は、ダイナマイトで吹き飛ばされ、灰色のコンクリートのテトラポットと味気ない大きなブロックの堤防になってしまいました。海の荒れた日は、黒磯が波を砕いて白い花のような模様を飽きる事なく作り出していました。天気の良い日には、潮の香りのする風の中、はるか沖合いまで黒磯が海の上に点在していました。風光明媚な、その景色は今はありません。そして、油蟹もどこかにいってしまいました。



 日本は男の服、体型に限らず、自然、人間、その他の考えが、ちょっと違う気がします。食べ合わせを考えて、食べ物を食べる事が大切なように、物事のバランスは大切なものです。人が快適に感じたり、生活出来るよう考えるべきだと思います。

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