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なにげない日々の暮らしの中で、日本の人々が出逢う細々とした小さな出来事を記述しています。
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2009年3月31日火曜日
冷やしたごと
『そば下さい。』
右手に持った、小さな肌色の食券をカウンタの上に、置きながら私は言いました。ここは、東京の茅場町にある、タイヤモンドビルと呼ぶ建物の中にある食堂です。昼食を食べにきたのです。
『そばね。』
白い頭巾を被り、前掛けを大きな腰に締めた、食堂の蕎麦・うどんコーナーの店員のおばさんが返答してくれました。
『そう。かけそば下さい。』
店員のおばさんの顔を見ながら、応える私。
『そばですね。』
再度、注文を確認をする店員のおばさん。食券には、そばとうどんと記入してあり、どちらかを注文時に選択することになっていました。
『そう。かけそば。』
顔を斜めに傾げて、食券を見ている、店員のおばさんの顔を見ながら、応える私でした。
しばらくの間、カウンタの前に立って、待っていました。おばさんが、持って来たのはうどんでした。鏡のような銀色のスチール製のカウンターの上に、出された、茶色のプラスチック製どんぶり容器に入った、黒いつゆと、白いかけうどんを見つめました。おばさんの勘違いだ。あんなに何度も聞き返し、念を押して出てきたのは、間違った品物だ。しょうがないなあ。かけそばに、青ねぎの刻みをたくさん入れて食べたかったのに。
新玉川線の駅のひとつに、池尻大橋駅があります。渋谷から、ひとつ目の駅です。その池尻大橋駅のそばに、蕎麦屋さんがあります。昔、仕事先が近所にあり、昼食、夕食時間によく利用しました。
『御注文が決まりましたら、お呼びください。』
店員のおばさんが、お茶を持ってきてテーブルに置いてくれます。
『冷やしたごと、下さい。』
注文は店に入る前から決めていたので、そう言った。
『それでね、テンカスを入れないで欲しいんですよ。』
私は、店員のおばさんの顔を見ながら言った。冷やし田子は、きしめんなのです。緑色のキューリや、赤いトマトを刻んだ、野菜が入った、冷たいつけめんのような麺なのです。夏の暑い日には、冷たい食感と、美味しいので良く食べました。しかし、天ぷらカスが入っているのです。それを、入れないように注文したのです。
『テンカスを、入れないんですね。』
店員のおばさんが、私の顔を見て言います。
『そう。いれないで欲しいんです。』
店員のおばさんの顔を見て、私も応えました。 おばさんが、戻ってきて言いました。
『テンカスを、入れないんですね。』
私も言いました。
『そう。入れないで、欲しいんです。』
しばらくして、私の座っている、木目のテーブルに背の低い、冷やし田子が入っている容器が置かれました。その冷やし田子を、見つめました。その中には、テンカスが、山盛りに入っていました。やれやれ、勘違いしている。入れないでって言ったのに。
『おねえさん! テンカスを入れないでって、言ったの。』
私は、店員のおばさんに苦情をいいました。
『ええ! そうだったの。じゃ、取りますよ。』
店員のおばさんは、言いました。
『いいです。これで。』
私は、応えました。そして、冷やしたごとを食べました。
政治の世界も、このような感じを受けます。国民が、望んでいる事を、勘違いしていませんか。ひと昔前の政治ポスターが、街中に張られていました。ポスターの文句は、こんなのです。
『なにない党がやる。』
『ひたむきに。』
『強い日本にする。』
何をやるんだろうと、思いました。また、何をひたむきにやるんだろうと。強い日本にして、どうするんだろう。国民が願っているのは、国民の生活ではないでしょうか。快適な生活です。テレビの中の政治家や、評論家が、お話をしていますが、いつも、ちょっと違うなあと思います。勘違いしてないのかなぁ~。
お茶だと思うんですね。日本人は。
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