2009年3月15日日曜日

恐ろしい衝動




 『エ~ン、エ~ン、怖いよ~、怖いよ~。』


 半ズボンを履いた小さな男の子が鉄骨で組まれた、火の見やぐらの中ほどの階段に必死につかまり声を上げて泣いています。小学2年生ぐらいでしょうか。どのぐらいの時間泣いていたでしょう。大人の男の人が見かねて、鉄の棒を溶接した階段を上っていき男の子を抱きかかえて下ろしてくれました。私も何度か登った事があります。馬鹿だなあと思いました。怖くて上れないなら最初から、上らなきゃいいのにと。ずいぶん昔の話です。私が小学生の頃の事です。どれぐらいの高さでしょうか。記憶では10階立てのビルぐらいでしょう。鉄骨には銀色のペンキが塗られていました。


 しかし、ちょっと違いますけど、小学生の頃に似たような経験があります。とても危険な場所に行ってしまうのです。そこは、落ちたらひょっとしたら命を失うかも知れない場所です。でも、自然に足が動いてしまいます。心の中は恐怖でいっぱいです。でも、足はジリジリと前進してしまいます。一歩半歩と、少しずつ少しずつ前進します。誰もいない場所、海の波が渦巻いている古い港の先端です。わずか20cm幅の海水で濡れた場所をジリジリ、ジリジリ進んでいきます。足元の古いセメントのブロックは海藻が付着していて滑りやすい状態です。背中と両腕を壁にピッタリと付け、今にも心臓が飛び上がりそうです。左に曲がると、そこは、海と空が視界いっぱいに広がっています。突き当たりの先端のセメントは少し欠けています。もうここまでしか進めない場所まで行くと頭の上の空に目を向け、遠くの水平線を見、眼下の渦巻く波を見て、引き返します。足首から、痺れるような感覚がお尻の方に、電気のようにはしっていて、気が遠くなりそうです。やはり、慎重にジリジリと足を後退させてです。安全な場所まで戻って、体の緊張が解けると、ホットして何事も無かったように普段の生活に戻ります。家族とともにご飯を食べ、学校も普段と変わらずに通います。でも、またその場所の近くに行くといつ同じ行動を取ってしまうか分かりません。


 火の見やぐらに登った男の子、私に限りません。人は時として思わぬ行動を取ってしまいます。興味から、あるいは自分でも分からない衝動にかられてです。人はそのように経験をつんでいくのだと思います。良い衝動もあるはずです。なんとなくゴミを拾ってゴミかごにいれるとか、人に親切にするとか。女性にお世辞を言うとか。


 生活を快適にする衝動を発見しましょう。快適に生活する為に。






子供に危険な遊びをされないよう、友達を作ってあげましょう。

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