2009年3月24日火曜日

移り変わりゆく原宿と、昔の原宿駅前の蕎麦屋さんでの災難





 『あの客お金を投げって行ったわよ。』



 そこは、JRの原宿駅の真ん前の蕎麦屋さんです。今はあるかどうかわかりませんが。随分昔の話なのです。私が東京に出てきた頃の話です。良く原宿に来ました。今の若者と同じだったのでしょう。明治神宮でお参りしたり、原宿通りを訳もなく歩いたりしていました。夏の虫が蛍光灯の光に引かれて集まるのと同じかと思います。



 その日は原宿界隈をひと通り歩いてお腹が空いたんだと思います。駅前にある蕎麦屋さんに入りました。そして中央の大きなテーブルの席に座りました。そして、座ってから気が付き、思いました。



『ああ、なんだよ。とんでもない席に座ちゃったよ。』



 座ってから気が付いたのです。私の座った席のテーブルの前で突っ伏している大きな男がいるではないですか。手の付けていない、さる蕎麦が大男のテーブルに置いてあります。すぐに席を変われば問題ないのですが、その頃の私は若く、一度決めた事、した事に結構こだわるところがありました。その日もそうでした。一度決めた席を動こうとせずに注文をしました。カツ丼を注文したと記憶しています。



 どうしても、突っ伏している大きな男に目が行きます。見ると立派な洒落た模様の茶色ぽいブレーザーと黒いズボンを着ています。足元には黒い、これまた立派な革の大きなカバンが置いてあります。腕にしている時計も高価な腕時計に見えます。年寄りではないですね。ラグビー選手のような体格です。



 どれくらいの時間が過ぎたでしょう。私の前には、透明なグラスに入った水が置いてあるだけで、注文したカツ丼は来ていません。突然男は立ち上がり、足元のカバンを持ち、その席を立ち去りました。そして、女性の店員が、その客のお金の支払い方を非難した声を上げたのです。



 多分、事業に失敗したのか、騙されたのでしょうと推測しました。そして、この蕎麦屋さんで食事をしているうちにがっくりときてしまったのでしょう。



 現在、100年に一度の不景気と言われています。多くの方が不景気により先行き心配しているのではないでしょうか。夜明けの来ない夜は無いと、分かっていても、先立つものがないと不安です。石油ショック、円高ショック、バブル崩壊、連続テロ事件後の不景気、今まで何度もありました。そしていつも、これから来る災難に備えるつもりが・・・。



 災難に負けない負けじ魂、チャレンジ精神があればと思うのですが。殺しはしないとも思うのですが。現実の前では、快適な生活はたんなる希望なのでしょうか。 テーブルに突っ伏しても、しょうがないしね。

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