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なにげない日々の暮らしの中で、日本の人々が出逢う細々とした小さな出来事を記述しています。
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2011年6月9日木曜日
閉塞感
『二匹。ほほほほ。ほほほほ。』
ここは、東京都港区の麻布十番です。たい焼き屋さんがありました。結構繁盛しているような、鯛焼き屋さんです。紺色をしたのれんを、右手で払い、店の中を覗いて言いました。ほんとに、小さな店なのですが、狭いところで男3人、女性1人が鯛焼きを製造、販売しています。
『鯛焼き焼けてる? 2つ下さい。』
『何匹?』
『2匹下さい。』
すると、先客の女性二人が、店の人と私の言葉を真似して、気の抜けた声で笑います。背の高い、お母さんと娘さんらいしい2人です。先客2人の女性に店の主人らしき、小さく体をかがめた男が、鯛焼きを入れた紙袋とビニールの袋を、何か菓子を置いてある台の上に置きながら言いました。
『お客さん、ここに置きますね。できたら、袋にいれないで、そのままお持ちください。』
私は店の主人が、別に出してくれた、鯛焼き二つを入れた白い紙袋を受け取り、代金300円を払って、店を出ました。いつまでも、へらへらと笑っている二人の女性を後にして、歩き去りました。私には分かっているのです。このような女性が、どのような人間なのかをです。けして、相手には出来ない人達なのです。目的も、行動もなく、生活している人達なのです。暇で、暇でしょうがないのです。何の存在感もなく、自分から、何も出来ない環境にいるのです。一緒に生活している、御主人が、厳しい人なのかもしれません。そして、目に見えぬ閉塞感の中で、暮らしているのです。
私にも、若い時に何も出来ずにいた、そんな時代がありました。神経がやられてしまうのです。体力が衰え、足の裏が水虫になり、皮が破れて大きな穴になってしまうぐらい、なにも出来ませんでした。多分、無意識に良い人間になる事が閉塞感を作ってしまうのではないでしょうか。親や、他人から批難されるのが怖さに、行動する事を躊躇して、閉塞感の中に入ってしまうのではないでしょうか。
ラベル:
鯛焼き屋さんで会った2人の閉塞感
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