2009年8月20日木曜日

独りぼっちの彼女の思い




 夕日の中で彼女はボンヤリとしているように見えました。

『可哀相になぁ。』

 私は、夕日の中でションボリしている彼女に声をかけました。彼女は戦いに疲れ果てていました。そして、戦う意味もなくしてしまったのです。何もかも無くしてしまったのです。子供も旦那も家もです。そんなときに、どんな心境になるのでしょう。

 旦那が居なくなってしまったのは何時でしょう。そして子供はまだ小さく幼い赤ん坊です。でも、子供に食べ物を持ってこなくてはなりません。そんな彼女の前に、彼女の家を奪う者が突然、現れたのです。黒と白の模様の身体をしたメスと、灰色のオスです。彼女が帰ってくると、子供達は巣から追い出されていました。彼女は敢然とした態度で2羽の侵入者に攻撃をして巣を奪い返しました。そして、幼い子供達は巣に戻ってきました。えさを母親から口移しでもらう為にピーピーと泣いています。そして、お母さんは、また幼い子供達の食べ物を探しに出かけていくのです。

 新しい侵入者はその機を見逃しませんでした。幼い2匹の子供達をただちに巣がら追い出しました。そして、逃げ惑う幼い小さな二匹の子供達に嘴で攻撃します。まだ、羽も生えていない小さな翼を立ててピーピー泣きながら逃げ惑う子供達。攻撃する侵入者の嘴には、幼い子供達の羽を抜いたときに出血した、赤い血がついています。

 ここは私が住んでいる集合住宅の4階のベランダです。いつの間にか住み着いた土鳩の番が居ました。知らない間に卵を産み付けていたのです。この子供達で3回めのお産でした。雛がかえり、ピーピーと親からえさをねだる泣き声が頻繁にしていました。しかし、何時ごろからでしょう。オスの姿が見えなくなりました。交通事故でもあったのでしょうか? 翼に白い羽を何枚か持つメスだけが雛と巣に一緒にいました。

 結末はあっと言う間に着きました。雛が一匹しか見当たりません。さっきまで2匹いたのに。侵入者がベランダから突き落としたのでしょうか?。一階に降りて、探しましたが見つかりません。一匹の雛だけがベランダの隅に追い詰められてピーピー泣きながら、攻撃されています。お母さんも戻ってきて、子供を助けますが、二匹の侵入者には、タジタジの形成です。ベランダの金魚を入れている池から水を飲み、子供に与えています。そして、ふたたび巣を奪え返しました。しかし、二匹の侵入者は巣のそばで小刻みに羽を動かしながら、ウーウーうなっています。おかあさんが巣を離れると、それが最後でした。最後の一匹の雛が攻撃されました。そして、いつの間にか姿を消しました。私が育ててやろうとして、雛の姿を探しましたが見当たりません。地上も見ましたが、どこにいったのでしょう。

 新しい侵入者は、我が物顔に巣を占領してしまったのです。戻ってきたお母さんは子供がいないので、侵入者に攻撃をする意味が無くなってしまいました。そして、ボンヤリとベランダの手すりに止まっていつまでもいつまでも、初夏の夕日を浴びていました。

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