2009年8月26日水曜日

なにも知らずに、命を賭けてしまった若い人の無知




 『うわあぁ!』

 私は、車のハンドルを握りながら、叫んでいました。突然車のコントロールが利かなくなったのです。ドスーン、ドスーンと何回ぐらいでしょう。片方のタイヤが浮いた状態の片輪走行を右に左に幾つかしました。最初はどちらの側のタイヤが浮いてしまったのか記憶にありません。時間にして数分ぐらいだと思います。以前テレビの画面でスタントマンがショウビジネスで片側だけの二つのタイヤで車を走らせるのを見ました。それを一般の公道でしてしまったのです。それも、右に左に交互にしてしまいました。夜も遅い時間に、トヨタの緑色のカローラに友達4人で乗っていました。緩やかな左カーブを70キロメートル近くのスピードで家路に向かって走っていました。

『やめろよぉ。あぶないよぉ。』

 私は、助手席にすわっている友達に言いました。

『へへへぇ。』

 彼は、嬉しそうな顔をしています。無邪気な小さな子供のような顔です。ふざけるのが好きなのです。いつもおかしな事を言ったり、したりして私達を楽しませてくれます。その彼が、助手席に座って勝手に車のギアを変えてしまっています。ニュートラルに入れたり、ギアのレバーを握ってしまいます。そんな彼が車がカーブを走っているときです。突然、私の握っているハンドルに手を掛けて、『あっ!』、と思うまもなく、グイっと動かして戻しました。夜も遅い時間なので車の通行はほとんどありません。スピードが出ています。私はハンドルを握っていましたが、何をしたのか分かりません。多分何もしなかったのだろうと思います。車は荒れ狂う状態から静かに何もなかったように走っています。

『やめろよぉ。あぶないよぉ。』

 危機を脱した状態から、ふわふわしていました。私は、得たいの知れない感情が湧き上がってくる前に、押し殺した小さな声で言いました。どのような感情が心に湧きあがったのでしょう。あっという間に来て去っていった恐怖です。そして、その恐怖の影には死神も隠れていたはずなのです。もし、対向車がいたり、運がなかったら大変な大事故になっていました。車は大破していて、乗っていた4人は大怪我どころの騒ぎではないでしょう。また、対向車に家族連れの人達が乗っていて正面衝突にでもなったら、どうなっていたでしょう。なんの罪もない、幸せな家族に不幸を押し付けるだけではありません。私達の家族も人様の家族に不幸を押し付けた事で深く傷つくことでしょう。事の重大さを知る事も出来ない若い私達です。何事もなく車が走っているのが奇跡でした。本当に不思議です。

 私の苦情に彼が言いました。

『じゃあ。暴走族はどうするんだ!』

 ちょっとハンドルを動かしたぐらいで大騒ぎするなと、言いたいらしいのです。暴走族の車の運転を見習えと言いたいらしいのです。

『あぶたいよぉ。』
『そうだよぉ。』

 後ろの座席に乗ってるに2人が小さな声で私に加勢します。実に、小さな小さな声です。そして、悪さをした彼も分かっているけどふざけ半分で、してしまったのです。生死をかけたふざけ半分でした。そして、あまり強く言うと喧嘩になっていまいます。その辺の事は良く分かっている私達でした。

 良く正月や夏の行楽シーズンに電柱に正面衝突等の若い人達の事故のニュースを見ます。どうしょうもないのです。防ぐことはこれからも出来ないでしょう。実に残念です。

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