2009年8月19日水曜日

地方の日本の人との会話




 『無我夢中だったねぇ。かあちゃんと一緒にさぁ。朝から晩まで、夢中で芝を刈ってたよ。その頃はゴルフ場建設がたくさんあってね。300万ぐらいなったねぇ。』

 喋り手の方は随分お年を召しています。送迎用のボックスカーの運転をしながら、自然な口調で私達に昔の話をしてくれます。私達に背を向けてる運転席の彼の頭髪はまだ随分と残っていて赤く染めています。幾つぐらいの年齢でしょう。70は過ぎているように見えます。

『昔はさぁ。お金を持ってきて食べ物を分けてくれるように東京から人がたくさんきたんだよぉ。でもさあ、お金をもらっても何もないんだよう。買えるものが。それで、下着でもなんでもいいからもってきてくれっていってさあ。』

 随分昔の話らしいのです。戦中、戦後の話らしいのです。なんとなく、生きた戦中戦後の話を聞いていて、貴重な感覚を感じていました。テレビや雑誌の伝達方法では伝わらない、庶民の生活からの言葉でした。なんの抵抗も感じずに気持ちよく彼の声が私達の耳に入ってきます。富士山のふもとで、自動車免許の合宿を終えて、東京行きの高速バスに乗るための送迎を受けているのです。

 彼には、息子さんもいて家の財産の一部である山もその旨伝えてあるそうなのです。人生の残りを送迎と畑仕事をして過ごしているようなのです。山には杉の木が植えてあって、何年も経つのだそうです。

『ヒノキは植えないの。』

 私は尋ねました。杉よりヒノキの方が価値があると、山林の事を何も知らずに尋ねました。

『手間が掛かるから。ヒノキは。杉は手間がかからないんですよ。』

 一緒に送迎されている、九州の方が彼の変わりに私に答えてくれました。

そんな感じて、高速バスの駅前迄、彼に送迎してもらいました。久しぶりに構えた会話のない、自然な語り口の話しての話を聞いた気がします。田舎のあぜ道を平和な気持ちで、歩いている気がしました。そして、東京から、来た私達はなんと不自然な会話をしていたのでしょう。中腰で構えて会話をしていた私達。様子を見るとは無しにそうすをうかがってしまう、私達の顔と目。

 本当に自然はいいですね。緑も空気も人も。母なる自然。都会の主導者って、自然だけど、自然じゃないんだよね。どこか。民主党も自民党も、その他の政党も。なんでかね。


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