2011年4月30日土曜日

孫悟空のような顔になった奥さん




『こんにちは。』
『どうも。こんにちは。』


 ある奥さんが私に、近づいてきて、挨拶をしました。私も、奥さんに挨拶を返しました。しかし、いつも見る奥さんの顔ではありません。私の顔は、びっくりした表情をしていたのでしょう。私が聞かないのに、奥さんが自分の顔について、話を始めました。ここは、川崎にある、ちょっと大きめな、スポーツクラブです。スカッシュボールコートのガラスのドアの前に、腰を下ろして休んでいたのです。いままで、顔を合わせてはいましたが、言葉を交わしたことが無い奥さんです。ふっくらとして、ちょっと大きな体をして、家事をしっかりやるような雰囲気が漂う、人の良さそうな奥さんです。


『運動するのが良くないのよ。汗をかくことが原因だと思うの。』


 この奥さんの旦那さんと、以前スカッシュボールのゲームを良くしました。しかし、私に負けてから、一度も顔を会わせていません。ほんとうに、ぱったりと旦那さんの顔を見なくなってしまいました。別段変な感情を持っているわけではないのですが、この奥さんが私に話しかけてくること自体、変な感じです。そして、旦那さんが、奥さんの顔を見ていったそうです。


 『わあぁ! なんだ、おまえの顔は!』


 彼女の顔は、中国の物語に出てくる孫悟空のような顔になっていました。おでことほっぺたと口の周りが、真っ赤なクレヨンで描いた、あざのように浮き出していたのです。本当にびっくりする顔になっていました。なにか更年期障害の、ひとつの症状だとは思うのですが。


 スポーツクラブの帰り道、灰色のアスファルトの上を歩きながら、考えていました。彼女が、ある奥さんと話しているところを以前見かけたのです。誰にも敬遠されている、奥さんとです。浅黒い顔をして、体の小さな、暇をもてあましている奥さんです。私は、よくないなあと思いました。多分、よからぬ話を聞かされていたのです。怖くなるような、人の悪口や、陰口のような内容だと思います。それが、原因で心の中に猜疑心が産まれてしまったのだと思います。そして、心に留めて於くことが出来ずに、顔に、その症状が表れてしまったのだと思います。でも、現在はなんらかの薬で直るものだとは思います。


 以前、会社の若い女性が、先輩の女性と仲良くなりだした事がありました。当然、若い女性の顔つきや、様子が先輩の女性の顔つきや、様子に似てきました。なんか、ろくでもない顔つきや、様子になりました。朱に交われば赤くなる。本当にそうですね。

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