2011年4月30日土曜日

洗濯機がなくなちゃたと言う、長い黒髪の女性




 『あの~、すいません・・・。』


 背後から、若い女性の声が聞こえました。振り向くと、肩まで伸ばした長い黒髪の若い女性が、私の後ろに立っていました。赤い2ピースの洋服を着て、色白で目の大きな、モデルのような女性です。何となく驚きながら、彼女を眺めていました。ここは、横浜港北区の綱島にある木造モルタル2階建て安アパートの玄関先です。冬の寒い天気の良い午前中のことでした。玄関横に置いてある洗濯機の中の、洗濯物を取り出していました。


 『あの~。この辺でごそごそ物音がしませんでした・・・。』
 『はあ。どうしたんですか?』


 後から分かったのですが、彼女は私の住んでるアパートの2つ左隣に住んでいる若夫婦の奥さんです。私が?マークの顔をしているので、彼女は話を続けました。


 『なくなちゃった!』
 『・・・何がですか?』
 『洗濯機が無くなっちゃったんです。』
 『ええ!』


 私は、彼女の目が向いている、アパートの玄関先に並んでいる各ドアの洗濯機の方を見ました。確かに、彼女の玄関のドアの横には、洗濯機がありません。彼女が話しを続けました。


 『ちょっと出かけたんです。その間に無くなちゃたんです。洗濯物が入っていて、洗濯しているはずだったんですけど。水も入っていて洗剤もいれてあって、回っているはずだったんです。』
 『いやぁ・・。そんな音はしてませんでしたよ。』
 『そうですかぁ。どうも、すいません。』


 しばらく、お互いの顔を見つめ合っていました。どうしたらいいのか分からないと云った表情をしてから、彼女は自分の部屋のドアに向かって歩いていきました。私の部屋は、道路脇にあり一番盗難に合いやすい場所なのですけど、彼女の家の洗濯機が盗まれました。私の洗濯機は、電気コードが窓の隙間から抜けなかったのだと思います。近くの区役所に出かけていった後の、ちょっとした時間に洗濯機が無くなったらしいのです。洗濯機は、洗濯物を洗濯している最中に、洗濯物と洗濯洗剤が溶けている水も含めて、何者かが黙って持っていったらしいのです。その後、アパートには私が知っているので2回泥棒が出没しました。合計3回です。同じ泥棒だと思いますが、捕まっていません。円高ショック頃の話です。


 東日本大震災に於いて、日本人のモラルの高さに、世界が驚いているとの報道がありました。でも、どこにでも、不正はあります。

0 件のコメント: