2011年7月1日金曜日

この世の中を動かす、不思議なひとつの力の威力


 『ほらほら、○×■?▽ちゃん。』



 若いお母さんがしきりに、小さな男の子をなんとかなだめすかそうとしています。小さな男の子は、そんなお母さんの事など全然気にしていません。手に持った赤と黄色のプラスチック製の玩具で力まかせに黒い長いすを叩いています。そこは、川崎にある大きな大学病院です。多くの人々が椅子に静かに座って診察や薬の受け取りの順番を待っています。なんだかんだで、100~200人はいるでしょう。そんな中で、小さな男の子は自由気ままに振舞っています。お母さんが困り果てて諦め顔で小さな男の子を力なく見ています。



 天気の良い春の日に私も、その病院に居ました。身体の調子が悪く、とうとう川崎駅からバスに乗り緑豊かな地に立っている、この大学病院に来たのです。朝早くから、一体身体のどこが悪いのか診てもらおうと来たのです。しかし、待てど暮らせど、いっこうに私の順番が来る様子はありません。どれぐらいの時間が経ったでしょう。私は隣の長椅子に、お母さんと一緒に座っているその小さな男の子に話かけました。



 『いくつ?』
 『3さい。』



 小さな男の子は、恥ずかしそうに小さな右手の指を3本立てて、たどたどしい声で応えました。



 『元気。』



 小さな男の子は、ちいさくうなずきました。



 『そう。良かった。』



 それから小さな男の子は行儀良く静かになりました。そしてお母さんに連れられてどこかに行ってしまいました。男の子は、誰も自分の事など考えてくれずに面白くなかったのです。お母さんの話はお母さん自身の要求しか話してくれません。そんな中で、自分を気にかけて話かけてくれた人がいたので、満足したのです。



 それから、すぐに私の名前が呼ばれました。私は女性の御医者さんに、身体の症状を話しながら、後ろに立っている看護婦さんを見ました。御医者さんの、後ろには大きな身体をした看護婦さんが仁王のように立っていました。そして、思いました。この看護婦さんが、私に便宜を図ってくれたに違いないと。多分、静かな病院で我がもの顔に振舞っている小さな男の子を何とかなだめたいと誰もが考えていたのでしょう。しかし、誰にも出来ずにいたのです。そして、私がそれをしたので、そのお礼として診察の順番を前にしてくれたのでしょう。



 もし、あなたが、なにかうまくいかないときは相手の立場を考えて問題を解決してやればいいと思います。そうすれば、相手もこちらの便宜をはかってくれるとの事です。考えたら、何度と無くそのような事があります。相手が、あなたの奥さんでも、旦那さんでも、子供でも、取引先でも、また世の中でもです。

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