『2000円貸してくれないですか? 俺、金、全然持っていないんですよ。』
『?』
深夜の事でした。新宿の熊野神社交差点のところでした。交番があり、結構車が走っています。私に話しかけてきた男がいました。背丈が低く、ちょっと痩せています。普通の男の人の様子です。ちょっと、遊びすぎてお金を使い果たしてしまったといった図です。彼、自分の折りたたみのオレンジ色の皮の財布を開いて私に見せます。何枚かのクレジットカードなのか、プレスチックカードが、カード入れに挟まっています。ですが、御札が挟まっているところは、空っぽでした。
顔を見ると、大人しそうですし、困っているようなのです。ちょっと本当に困っている顔の表情です。しばらく顔を見た後に、黙って自分の財布から、千円札を2枚出して、渡しました。彼が、自分の名前と、電話番号を書き込んで、私に渡します。そして、私の電話番号も教えてくれといいます。名前と電話番号を書き込んで渡しました。
2週間が過ぎました。彼から、何の連絡もありません。免許書を預かっているのです。困って、電話をしました。
『こちらは、携帯電話会社です。お掛けの携帯電話は電池が切れているか、電波の届かない場所にあります。』
何度、電話をかけても同じです。何なのか分かりません。二千円で自分の免許書を、赤の他人に預けてしまう事ってあるんでしょうか? 顔と免許書の写真は同一人物でしたけど。おなじみの会社の同業者に、事の顛末を話したら、こんな答えが返ってきました。
『良く聞くよ。あるんだよね。顔を見てやるんだよね。人の良さそうな顔をしていると、やられちゃうんだよね。20人やれば、二千円で掛ける20でしょ。』
『ええ! でも、免許書を預かってるんだよ。』
免許書を私に預けて二千円を借りた彼、何を考えているんでしょうか? しかし、本当に困ってしまっているんですよね。昨日の昼間、車のラジオ放送から、耳に心地より声をした男の人の話が流れました。番組はおおたけまことゴールデンラジオでした。
『福島の原発事故は終わっていないんですよ。福島の人達は今、川の中で溺れているんですね。そして、日本政府の人達は橋の上から、それを眺めているのです。助け出すこともしないで。』
昔、目黒にある精密会社の社長さんがポッツリと静かな声で、私に言った事があります。なんとなく分かりました。
『人を助けるのは難しい・・・。』
今、混迷の中、世界が分からなくなっています。もちろん日本なんか、国難と云われてから、相当な時間が経っています。そんな、日本、世界、世の中になっちゃたんです。もし、自分の生活が分からなくなっているなら、自分に分かるように、自分自身を助けましょう。それは、どういった意味なんですか? と。
『その基準って、なんですか?』
『専門家と言っていますけど、どこの、誰ですか?』
『その数値は、どのような意味を持っていますか?』
『総理大臣、各大臣が云っても、間違っていることもありますよね? 同じ人間だもの、偉くもなんともないよ。私達と同じ人だよ。』
『自分は今、何をやっているんだ?』
『安全です?』
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