2011年11月27日日曜日

見て気持ちの良いものを見る驚きと、知らされる日本の住宅事情

 『?』



 すれ違うには、狭い灰色のアスファルトの歩道を歩いて用賀に向かって歩いていました。歩道には街路樹が植えてあります。対面する歩行者が来ると、肩が触れ合うくらいの幅しかない歩道です。そんな、歩道を歩いていると、からし色をした建物が右手にあります。ちょっと、歩道から奥まったしゃれた玄関です。落ち着いた感じで、すこしゆとりがある広さを持つ門構えです。丸みを佩びた柔らかな感じの黒い鉄格子があり、建物内の廊下の照明の下、壁にかけてある額縁に入っている幾つかの絵が見えます。暖かい秋の日の夕暮れ時の事でした。



 歩きながら通り過ぎると、建物と建物との隙間から、ベランダにも黒い鉄格子が見えます。2階建て、3階建ての洒落たマンションです。まわりの、ごつごつしたマンションや建物に囲まれながらも、きちんと他に交わる事無く穏やかな感じで自分を主張していました。



 小さな子が、大の大人に、ちゃんとした挨拶をするのを見たときの驚きと、恐持ての顔をした奥さんが、騒がしい都会の喧騒の中で、断固とした様子で、静かに頭を下げ、腰をおり、礼儀正しく謝る姿を見たときの驚きと同じような驚きを、この洒落た建物を見るたびに感じます。すみずみまで、配慮し洒落のめしたデザインは、スペインの太陽の光の下、緑に囲まれた、のどかな風景の中に建つ建物のようです。そして、日本の住宅が、なんと寒々しい、お寒い現状かを知らされるようなのです。



 そういえば、随分昔ですが、こんな事を言った政府の要人のような人が云いました。



 『日本の住宅問題は、片付いた。』



 それに対して、誰かが言いました。



 『酷いこと、言うね。ほんとに。』

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