2010年6月14日月曜日

罰当たりな人




 『石村さんと話した後って、事務所の人達とギスギスするんだけど?』


 そんなことを私は彼に言いました。彼は私の顔も見ずに、歩き去っていきます。何故か、彼は、私と話を沢山します。面白可笑しな話ばかりです。ですが、割合からいうと、7割がた、わたしが話しています。内容は、政治、まわりの出来事、ありふれたものばかりです。


 いつごろでしょうか? 事務所の人達が私を特別視しはじめました。


 『あなたが、あなたが・・・・。』


 とても他人行儀な話方で、私に話し始める事務所の若い事務員。あるいは、ぽつりと突然意味不明なことをつぶやく事務員。あるいは、不明な笑みを顔に浮かべて私を見る事務員。


 しかし、相変わらず彼と私は顔を合わせる度に沢山の話をしています。そうなんですね。彼が、私を陥れるために事務所の人達によからぬことを言っているようなのです。ですが、平気な顔で事務所の人達とも話しをしながら笑っている私に恐れをいだきはじめたようです。


 彼が怯え始めました。彼の話方が滑り始めました。そんなことが、ちょっと気になり始めました。そうなんですね。小さな世界に住んでいるんです。彼は。そして、試しているのです。私を。


 日本人なんです。これが、現在の。彼ばかりではせん。ほとんどの日本人が自分一人では精神生活をすることが出来ないのです。

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